無汗症

無汗症とは

無汗症(むかんしょう)は、運動時や入浴時、暑い環境下など、通常なら発汗するはずの状況でも汗がまったく出ない状態を指します。
発汗には体温を調節したり、代謝を助けたりすることで、体の機能を正常に保つ重要な役割があります。無汗症により汗が出ないと、体内に熱がこもりやすくなり、体温調節が困難になります。その結果、簡単に体温が上昇し、熱中症のリスクが高まり、重篤な場合は命に関わることもあります。

無汗症には、生まれつきの先天性のものと、後から発症する後天性のものがあります。後天性の中でも原因が特定できない「特発性後天性全身性無汗症」は、体の25%以上の範囲で発汗の低下が見られ、かつ明確な原因がないまま症状が現れるのが特徴です。
皮膚の乾燥や熱感、痛みなどを伴うことも多く、日常生活に大きな影響を及ぼす疾患です。夏場には症状が軽くなり、冬場に悪化する傾向も見られます。

無汗症の原因は?

無汗症の原因は、先天性と後天性で異なります。

先天性の場合

遺伝子の異常により、生まれながらに発汗機能が働かない状態です。先天性無汗症では、顔つきや歯の異常、脳血管障害、腎不全など、他の疾患を合併することもあります。

後天性の場合

熱中症や薬の副作用により、汗腺の働きが低下したり、汗腺自体が損傷を受けたりすることで発症します。その他にも、神経系の異常、脊椎の問題、内分泌やホルモン分泌の異常、アトピー性皮膚炎、コリン性蕁麻疹、膠原病などが原因となることがあります。

特発性後天性全身性無汗症は、自己免疫疾患の可能性が指摘されていますが、明確な原因が判明していないケースも多くあります。この場合、発汗以外の神経症状や自律神経症状を伴わないことが特徴です。

無汗症の症状セルフチェック

無汗症の症状セルフチェック
  • 汗をほとんどかかない
  • 風邪や運動、入浴などで体温が上昇した時に痙攣、意識障害が起きる
  • 乾燥やかゆみ、発疹などの皮膚の異常
  • 口が渇く、頭痛がする、吐き気、めまいなどの熱中症症状
  • 目が充血する

無汗症の主な症状は発汗がないことですが、それに伴いさまざまな症状が現れます。体温調節ができないことで、体のほてりや疲労感、脱力感、動悸なども起こりやすくなります。
皮膚にピリピリとした痛みが生じたり、コリン性の赤い発疹(蕁麻疹)が現れたりすることもあります。これらの症状は全身のどこにでも起こる可能性があります。

汗が出ないことで肌の水分保持機能が低下し、乾燥肌になりやすく、バリア機能も弱まるため、さまざまな病気にかかりやすくなる恐れもあります。

無汗症の治し方

先天性無汗症については、根本的な治療法はまだ確立されていません。

特発性後天性全身性無汗症の治療では、運動や半身浴などで汗腺の機能を訓練することで、自然に症状が改善することがあります。ヒスタミンが発汗を妨げることが知られているため、抗ヒスタミン薬による治療を試みる場合もあります。
重症例や熱中症のリスクが高い場合や、日常生活への影響が大きい場合には、ステロイド投与を行うこともあります。

対症療法としては、体温調節が重要になります。室内の温度や湿度をエアコンで適切に管理し、水分補給をしっかり行います。夏季は特に高温多湿に注意が必要で、冬季は重ね着で調節し、湯たんぽやカイロも活用します。ただし、低温やけどには注意が必要です。
高体温だけでなく低体温にも注意を払い、深部体温(鼓膜温度、口腔温度など)を測定して体温管理を行います。