やけど(熱傷)

やけど(熱傷)とは

やけど(熱傷)とはやけど(熱傷)は、熱や化学物質、電気などにより皮膚が損傷を受ける外傷です。日常生活で最も多いのは熱によるやけどで、熱湯や油、熱い金属への接触などが原因となります。
皮膚は表皮、真皮、皮下組織の3層構造になっており、やけどの深さによって症状や治療期間が大きく異なります。浅いやけどは痛みが強く、深いやけどは神経も損傷するため痛みを感じにくいという特徴があります。
やけどは受傷直後の適切な処置が重要で、初期対応により症状の悪化を防ぎ、治癒期間を短縮することができます。軽症に見えても、時間経過とともに深くなることもあるため注意が必要です。

やけどをしてしまった時の
処置

やけどをしてしまった時の処置やけどをした際は、すぐに冷却することが最も重要です。
まず流水で15~30分程度冷やします。衣服の上から熱湯をかぶった場合は、無理に脱がずに服の上から冷水をかけてください。氷を直接当てることは凍傷の危険があるため避けましょう。
指輪や腕時計などのアクセサリーは、腫れる前に外します。水ぶくれができても破らないよう注意し、清潔なガーゼで軽く覆います。
広範囲のやけどや、顔面、手足、陰部のやけどは重症化しやすいため、応急処置後すぐに医療機関を受診してください。

やけどの原因は?

熱による受傷がやけどだと思われがちですが、それ以外にもさまざまな原因があります。

温熱やけど

最も一般的なやけどで、高温の液体や蒸気、金属、炎などに接触することで生じます。熱湯、油、アイロン、ストーブなど、日常生活で触れる機会の多いものが原因となります。

低温やけど

40~55℃程度の比較的低い温度でも、長時間接触することで生じるやけどです。ホットカーペット、湯たんぽ、使い捨てカイロなどが原因となり、就寝中など気づかないうちに深いやけどになることがあります。

日焼け

紫外線を長時間浴びることによる皮膚の損傷です。海水浴やスポーツなど屋外活動時に起こりやすく、重度の場合は水ぶくれを伴うこともあります。

化学やけど

強い酸性またはアルカリ性の化学物質が皮膚に付着することで生じます。洗剤や漂白剤でも起こることがあり、物質により深部まで進行することがあります。

電撃やけど

雷や電流との接触により生じるやけどです。皮膚表面の損傷は軽くても、体内を電流が通ることで深部組織に重篤な損傷を与えることがあります。

やけどをした時に冷やして
いないと痛い状態とは?

やけどをした部位を冷やさないと痛みが続くのは、熱が皮膚の深部に残っているためです。
皮膚に熱が加わると、表面だけでなく深部にも熱が伝わり、組織の損傷が進行します。冷却することで、この残存熱を取り除き、やけどの深さが進行することを防ぎます。

また、冷却には血管を収縮させて炎症を抑える効果もあります。冷やすことで痛みの原因となる炎症物質の産生が抑制され、痛みが和らぎます。そのため、冷却を中断すると再び痛みが強くなるのです。

やけどの分類によって
治る期間が異なる

やけどは深さにより1度から3度に分類され、それぞれ治癒期間が異なります。

Ⅰ度熱傷

表皮のみの損傷で、皮膚が赤くなり痛みを伴います。日焼け程度の軽いやけどで、1~2日程度で跡を残さず治癒します。

浅達性Ⅱ度熱傷

真皮の浅い部分までの損傷で、水ぶくれができ強い痛みを伴います。ピークを過ぎると水ぶくれの水分が吸収され、薄皮がめくれます。感染を生じなければ適切な治療により2~3週間で治癒し、通常は跡を残しません。

深達性Ⅱ度熱傷

真皮の深い部分まで達する損傷で、水ぶくれの底が白っぽくなります。毛根や汗の腺、末梢神経網もやけどで損傷しており、部分的に感覚がなくなることもあります。治癒に4週間以上かかることもあり、跡が残る可能性が高いです。

Ⅲ度熱傷

皮膚全層が損傷し、白色や褐色、炭化した外観を示します。神経も損傷するため痛みを感じません。自然治癒は困難で、植皮などの手術が必要になることがあります。

やけどをした時の受診の目安

Ⅱ度以上のやけどが疑われる場合、水ぶくれができている場合、やけどの範囲が手のひらより大きい場合は受診が必要です。
顔面、手足、関節部などのやけどは、機能障害を残す可能性があるため、軽症でも受診をおすすめします。
乳幼児や高齢者のやけど、持病がある方のやけども重症化しやすいため、早期の受診が重要です。また、受傷後時間が経ってから悪化することもあるため、経過観察中に症状が悪化した場合は再受診してください。

やけどの治療

やけどの治療は、深さや範囲により異なります。

消毒

感染予防のため、生理食塩水や消毒薬で創部を洗浄します。汚れや異物を除去し、清潔な状態を保ちます。

外用薬

抗菌作用のある軟膏やクリームを塗布し、感染を予防しながら創部の湿潤環境を保ちます。ステロイド外用薬で炎症を抑えることもあります。創部の状態に応じて適切な外用薬を選択し、ガーゼやフィルム材で保護します。

内服薬

痛みが強い場合は鎮痛薬を処方します。また、感染の兆候がある場合や広範囲のやけどでは、予防的に抗生物質を使用することがあります。

やけど治療後に
気を付けること

やけどが治った後も、適切なケアを続けることが大切です。

紫外線対策

紫外線対策治癒した皮膚は紫外線に弱く、色素沈着を起こしやすいため、日焼け止めの使用や衣類での保護が必要です。

保湿ケア

やけどは湿潤環境を保つと早く、きれいに治りやすいです。外用薬やガーゼで適切に保湿しましょう。

清潔にする

ガーゼ交換や消毒を医師の指示通りに行いましょう。また汚れた手で触ったり、はがれかけた皮を無理に取ったりしないようにしましょう。